- 2008年12月14日 17:07
- 漫画レビュー
1ヶ月以上もブログを放置してしまいました。
実はここの所、青天の霹靂ともいう事態が発生して、ブログの更新どころではなかった。
今日になって少し落ち着いたので、記事がかけるようになりました。
前回の記事でも少し触れたのですが、プライベートでかなり精神的に参ってます。
今回は、そんなやさぐれた気分を癒してくれる、素晴らしい漫画を紹介します。
| 弘兼憲史SF作品集ザ・スペース (プラチナコミックス) | |
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この『ザ・スペース』は弘兼憲史が、30年近く前に発表したSF作品。
弘兼憲史といえば、『島耕作』。
『島耕作』といえば、弘兼憲史というくらいですね。
後は、『人間交差点』に代表される、青年漫画の巨匠。
自らのサラリーマン経験を生かした、緻密な現代劇で、世代を超えて
愛される作品群を発表している、弘兼憲史がSFなんて描いてたの?
と、思われるかも知れません。
私もそう思ってました。
しかし、偶然この作品をコンビニで見かけ、手にして中を見た時。
緻密なSF考証と、スペースオペラとしての完成度の高さ、
そして、後の作品へと繋がる深い人間描写に、そんな疑問は吹っ飛びました。
この『ザ・スペース』、ストーリーを要約すると。。。
時は23世紀。
地球は統一政府による徹底した管理社会で、『平和』を享受していた。
しかし、それは偽りの『平和』であった。
一部の人類を除き、男女問わず、不妊手術を強制され、
人間は優良な男女からのみ『生産』される。
さらに、生まれる前から『頭脳労働型』人間と『肉体労働型』人間に
選別され、職業選択の自由はない。
遺伝子レベルで、人間を管理し、計画的に『生産』、『配置』する事で
均衡を保つ究極の管理社会が生み出した『平和』であった。
そんな中、主人公の時代剣は『肉体労働型』人間に生まれながら、
法律の勉強をしたとして重罪を課せられる。
この管理社会で、生まれつき課せられた職業以外に就こうとすることは
重大な国家反逆罪であったのだ。
30年の流刑星送りとなった時代剣に対し、無罪とする代わりに
囚人護送宇宙船の乗組員になる話が舞い込む。
護送船の乗組員に出会い、当時の人間にない『人間らしさ』を見た時代剣は
宇宙船に乗り組むことを決意する。
しかし、それは、困難な旅の始まりであった。
光速で移動する宇宙船の中では、時間の流れが極めて遅くなる。
宇宙船の中の数週間が地球の数十年に相当するのだ。
こうして、時代剣は時と人の流れの交差する果てしない旅へと出発する。。。
といった具合なのですが、秀逸なのが、光速に近づく物体の時間の進行が
遅くなるという相対性理論の"ウラシマ効果"を効果的に用いた設定。
例えば、送り届けた囚人が、数日後に戻ってきた時には、すでに何十年も経過して
帰らぬ人となっていたり、地球に帰る度に数十年の時がたち、政権は変わり、
北極の氷は溶け、日本列島は火山に包まれるほど景色が様変わりしていたり。。。
互いに、進行する"時間"が人間同士の出会いを非常に奥の深いものしています。
この辺は、『人間交差点』などにも通じるものがあります。
さらに、それらの根拠となるSF的考証もかなりしっかりしているので、
非常に説得力のある内容となっています。
何よりも、生まれつき『頭脳労働型』人間と『肉体労働型』人間にわける管理社会は
格差が広がり、親の格差がその子へと受けつがれる社会になりかけている
現代の日本に通じるものがあり、薄ら寒さを覚えます。
『人間らしさ』を求め、あてのない旅を続ける
主人公たちと、彼らが邂逅する人物・出来事。
管理社会に埋没した人間よりも、『人間らしさ』を持った囚人たち。
大宇宙の驚異。
そして、人類の行く末は。。。
弘兼憲史自身若いころの作品だけあって、これらのメッセージが
ストレートで、青臭くもありますが、だからこそ清々しさすら感じます。
巨匠の描いた、"異色"の本格的SF漫画。
是非、ご一読あれ。




