前回のレビューはSex Pistols(セックス・ピストルズ)。
で、今回は引き続きUKパンクからThe Clash(ザ・クラッシュ)を紹介するのだが、
少なくても、今回紹介する『Sandinista!』はザ・クラッシュを初めて聴くには
決して相応しくないアルバムかもしれません。
しかし、パンクとはファッションでもスタイルでも、暴力性でもない
実に懐の深いロックである、ということを知るには又とないアルバムです。
| サンディニスタ! | |
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(『The Magnificient Seven』)
(『The Magnificient Seven』:Live)
ザ・クラッシュは1976年 - 1986年にかけて活躍したUKパンクバンド、
上で挙げた通りセックス・ピストルズと並んでUKパンクの雄と称されながらも
短命だったセックス・ピストルズに比較し、政治的メッセージが強い歌詞と
常にバンドとしての革新性を求め10年に渡り活躍しました。
そして80年代最も成功したパンクバンドでもあります。
この『Sandinista!』はザ・クラッシュがその出世作『London Calling』の
翌年の1980年に発表したアルバム。
そして当時のアナログレコードで3枚組、合計36曲に及ぶ超大作です。
ステレオ・タイプなパンクロックから完全に決別し、ファンク、レゲエ、タブをはじめ
ラップ、カプリソ、カントリーにいたるまるまで、雑多なジャンルに彩られたその音楽性は
発表当時、失望しザ・クラッシュから離れるファンがいる一方、
ビートルスの『ホワイト・アルバム』匹敵すると称されるほど、極端なものでした。
確かに、ザ・クラッシュを紹介するのであれば、1st、2ndの正当なパンク路線も考えられるし、
ザ・クラッシュの名を世界に知らしめた、エポック作品『London Calling』や、
彼らの集大成にして最もヒットしたアルバム『Combat Rock』の方が相応しいかもしれません。
それでも、私がザ・クラッシュの代表作としてこの『Sandinista!』をイチ押しするのは、
ザ・クラッシュがパンクロックの多様な可能性をポップミュージックに対する、
屈折さえ感じさせる愛情を持って表現しきっているからに他なりません。
そして、それらは決して時代の仇花にならず、今なお新鮮さを失わずにいます。
(むしろ興行的に成功した『London Calling』や『Combat Rock』の方が
“時代”を象徴する“名盤”となっているのはある種の皮肉でしょうか?)
アルバムタイトルの『Sandinista!』とはニカラグア開放戦線のこと
そして赤と黒を基調にいたアルバムジャケットからしてザ・クラッシュらしい
政治的なメッセージがすでに見え隠れします。
そしてアルバムを聴いたとたん始まる「Rin!Rin 7 AM」というラップフレーズ
オープニングナンバー『The Magnificient Seven』(邦題『7人の偉人』)の
タイトなファンクラップからして“ただのパンク”ではないと思わせます。
(恐らく、英国人初のラップでしょう。)
そして、モータウンサウンド風のポップナンバー『Hitsville UK』
正統派(?)ダブの『Junco Partner』
インベーダーゲームの効果音を取り入れ、80年当時の米ソを痛烈に皮肉った
『Ivan Meets G.I. Joe』(邦題『イワンとG.I.ジョーが会うとき』)
大抵の人は、この時点でこのアルバムが単なるロックアルバムでない事に気づくでしょう。
それ以外にも“ポップで聴かせる”シンプルなロックナンバー、
『Somebody Got Murdered』(邦題『誰かが死んだ』)。
タイトなダブナンバー『One More Time』。
サイレンのようなギターリフが盛り上げる、ソリッドなロックナンバー『Police On My Back』
核戦争をストレートに題材にした『Lighting Strikes (Not Once But Twice)』。
徴兵問題をザ・クラッシュらしい視点で歌い上げた『The Call Up』
それ以外にも、名曲が粒揃い。ダブを中心に、あらゆるポップ、ロックナンバーが
猛烈に過ぎ去っていく、そして、その全てにザ・クラッシュ一流の
政治的、社会的メッセージが込められているのだから、
3時間近く渡り全曲聴き終えた時は、さすがにへとへとになります。
しかし、決して退屈するものではありません。
なぜなら、全編に渡りザ・クラッシュは“真剣勝負”を挑んでいるから。
(“真剣勝負”故にあまりにも実験的な作品もありますが、そこはご愛嬌。)
そして、その“真剣勝負”の末に獲得したのは、時代を超越した
楽曲、アルバムとしての底知れない魅力。
アマゾンのカスタマーレビューで「スルメのような作品」と評されてましたが、
言いえて妙、確かに「聴けば聴くほど味がでる」アルバム。
そういったところが、時代を超えた魅力となっているのでしょう。
しかし、私としては、日本版アナログレコードのライナーノートに記載されていた
「限りなく混沌に近い黒」という方が適切だと感じます。
それは、間違いなく人を惹きつけてやまない“黒”でしょう。
ちなみに、アナログレコード時には英文の歌詞カードがタブロイド紙のようになっていて、
例の『Ivan Meets G.I. Joe』(邦題『イワンとG.I.ジョーが会うとき』)などは
マンガになっていて中々秀逸なつくりでした。
贅沢言えば、アナログレコードを手にいれた方が面白いでしょう。
ザ・クラッシュに関しては最後に一言
惜しむらくは、ヴォーカリスト:ジョー・ストラマーの死によって
かつての雄姿が再現される可能性が極めて低くなってしまった事でしょう。
しかし、セックス・ピストルズの様に“大御所”“レジェンド”扱いされる寂しさと
比べた場合、複雑な心境になります。
時を経て輝き続ける「限りなく混沌に近い黒」
『Sandinista!』はそんなアルバムです。



すげーやっぱり
